2.現代朝鮮語の言語規範

 

中島 仁(東京外国語大学大学院博士後期課程)

 

1. はじめに

本稿では現代朝鮮語の言語規範の歴史と現在を概観する.そして,その規範が韓国人にどれ程浸透しているのかをアンケートを通して見てみようとするものである.朝鮮語が使用されている国や地域は大韓民国(以下韓国)と朝鮮民主主義人民共和国(以下北朝鮮)を中心としていくつかある[1]言語的には本来同一のものであるが,国語政策の差異に基づく語彙・発音・正書法などの違いが存在するため.本稿ではその中でも韓国の言語規範に焦点を当てて見ていくことにする[2]

 

2. 韓国の言語規範

韓国の言語規範としては現在以下の4つがある.

 

外来語表記法외래어 표기법1986 文教部告示 第85-11

ハングル綴字法한글 맞춤법 1988 文教部告示 88-1

標準語規定표준어 규정 1988年 文教部告示 第88-2

国語ローマ字表記法국어의 로마자 표기법 2000  文化観光部告示 2000-8

 

2.1 言語規範の変遷

以下,上記の中で最も基本とも言えるハングル綴字法を中心に,その歴史的変遷を見ていくことにする.

 

2.1.1 ハングル綴字法

ハングル綴字法を始めとする朝鮮語の言語規範についてはハングル学会[3]がその初期から非常に大きな役割を果たしてきたと言える.そのハングル学会が最初に出したのが「ハングル綴字法統一案(한글 마춤법 통일안)」である.これは1933年に作られたもので,ハングルで朝鮮語を表記するための最初の規範であると言うことができる[4].本格的な形態主義に基づき現行のハングル綴字法の原型となったものである.このとき初めて分かち書きや句読法が明文化されることとなり,また従来放置されてきた漢字音の表記も固有語なみに改めている.次に1936年に「査定朝鮮語標準語集(사정한 조선어 표준말 모음)」が発表されたのに伴い,付録に載せられた第7項と第8項の標準語の語例を削除し,ハングル綴字法統一案の各項の用例と語例を全て査定された標準語に直したのが「ハングル綴字法統一案[修正版](한글 마춤법 통일안[고친판])」(1937年)である.その後1940,1946,1948,1958年と連続して4回の改定が行われた.しかし,1948年の改定は1946年の全文を純ハングルに直したのみであり,また1958年の改定は本文中の文法用語だけを文教部制定の用語に換えたものであり,純粋な改定とは言えないものであった[5]

このようにハングル綴字法統一案は若干の修正はあったが,1933年のものが維持され,公表された直後から社会的にも受け入れられ規範として地位を得ることとなった.解放後,文教部の国定教科書にもこの規範が採択されている.こうして韓国の言語規範の基礎がほぼ完成の段階を迎えることとなる.

その後10年以上改定は行われなかったが,ハングル綴字法統一案が作られてから数十年が過ぎ,言語の変化に規範が追いつけなくなるに伴ってその検討と修正が問題として提起された.そこで文教部は1970年にハングル学会を主幹として国語調査研究委員会を構成し,その中にハングル綴字法再審委員会を置き統一案を修正させ,その修正案を元に1979年に「ハングル綴字法案(한글 맞춤법안)」を発表した.その後文教部は1982年から1984年にかけて1979年の案の改定を学術院に移管し再検討させ[6],1985年にさらにその検討を国語研究所に委託した[7].その結果を受けて文教部ではさらに審議検討を加え最終的に1988年1月に「ハングル綴字法한글 맞춤법」として公布され,翌年3月1日から施行されることとなった.しかし,内容的にはハングル綴字法統一案の部分的な補完に終わり[8],ハングル綴字法統一案は作られてから70年以上も経った今も未だに大きな影響を与え続けている.

なお,その間ハングル学会でも独自に「ハングル綴字法統一案」を修正[9]して,「ハングル綴字法(한글 맞춤법)」を1980年に発表している.

 

2.1.2 標準語規定

標準語に関してもハングル学会が1933年に制定した朝鮮語綴字法統一案で定められ,その総論第2項で「標準語はおおよそ現在中流社会で用いているソウル語とする[10]」とされている[11].その後1936年には朝鮮語標準語査定委員会[12]によって「査定朝鮮語標準語集」が発表された.これは9574の語彙を査定したもので,その内訳は標準語6231,略語134,非標準語3082,漢字語100であった.これは査定された語彙が収録されているだけで,査定の基準となる規定は提示されていないものであった.しかし,解放後もその標準語の規定は継承されることとなり,社会的地位を獲得することとなる.そしてさらに1936年にハングル学会によって「朝鮮語大辞典」編纂が着手され1940年に完成している[13]

その後,時間が経つにつれて標準語に関する規定の現代語化が必要とされるようになった.そこで1970年からハングル学会を主幹とした国語調査研究委員会が標準語の査定を行うことになる.1977年までにソウルの言葉の実態調査や濃音や長音の研究,地方出身作家の作品の通用語調査,文献の語彙調査などを行い1977年までに約16500の語彙の査定を行った.その結果は文教部に報告され,文教部ではさらに国語審議会ハングル分科委員会に審議を依頼した後,1979年に「標準語再査定試案」を作成するに至った.さらに学術院下の語文研究委員会,国語研究所などに査定を委託し,最終的に1987年に国語審議会の建議にかけ,1988年1月に「標準語規定(표준어 규정)」として公布され,長年にわたる審議が実を結ぶこととなった.標準語規定はハングル綴字法とは異なりハングル綴字法統一案の改定とは言えず,新しく制定したものであるという特徴がある.

 

2.1.3 外来語表記法

1933年のハングル綴字法統一案の一条項として外来語表記においては新たしい文字や符号は使用せず,ハングルの字母だけでの表音主義に従うようにしたのが最初である.この規定の精神に従って1940年ハングル学会が「外来語表記法統一案(외래어 표기법 통일안)」を発表,これによって初めて外来語表記の規範が成立した.1986年の外来語表記法は基本的にはハングル綴字法統一案や標準語規定と同様にハングル学会の外来語表記法統一案の表記原則を引き継いだものと言える.

解放後爆発的に外来語が増加したのに伴い文教部でも1948,59,60,63,69年の数回にわたり外来語表記法の制定と改定を行った.中でも1959年の「ローマ字のハングル化表記法(로마 자의 한글화 표기법)」はその後何度かの改定はあったものの外来語表記の模範としておよそ20年間にわたりその地位を保つこととなった.また,文教部では各国言語の表記方法と実例を提示した編修資料第1から6集(1959−1972)を発表している.

1979年に編修資料や細則の矛盾点が生じたため再検討が行われ「外来語表記法案(외래어 표기법안)」し,また学術院と国語研究所に委託し審議した結果を受容しできあがったのが1986年の「外来語表記法(외래어 표기법)」である.

 

2.1.4 ローマ字表記法

朝鮮語のローマ字表記法の最初は1940年に出された「朝鮮語音羅馬字表記法(조선어음 라마자 표기법)」である.これもやはりハングル学会が考案し,外来語表記法統一案の付録として出されたものであった.

その後文教部でも1959年に規範を制定した.この表記法は次に改定されるものよりも現行の表記法に近く,補助符号は使われていないなどの類似点が見られる.

さらに,文教部では1984年に大幅な改定を加え「国語のローマ字表記法(국어의 로마  표기법)」として発表する.この改定では第1章の表記の基本原則第2項に「ローマ字以外の符号はなるべく使用しない[14]」という条項があるのにもかかわらず,今まで用いられていなかったいくつかの符号を用いるようになるなどの修正が加えられた[15].なお,同年ハングル学会でも独自に「朝鮮語のローマ字表記(우리말 로마자 적기)」を発表している.

その後コンピュータの普及に伴い補助符号のある1984年の表記法では,コンピュータ上での処理時に問題が発生するなどの不都合が生じるようになる.また語頭と語中での平音の表記が異なったり[16],「」を表記する時に母音によって「s, sh」の区別があるなどの問題もあった[17].このような不都合を考慮して再び審議が行われ補助符号をなくし,子音の表記も簡単にした「国語のローマ字表記法(국어의 로마자 표기법)」が2000年に発表されるに至った.その結果,若干の違いはあるものの[18]基本的には59年の表記法の原則に戻ることとなった.

2.2 言語規範の現在

ここでは現在のそれぞれの規範の内容について簡単に概観する.なお,参考のためにそれぞれの規範の目次を巻末に掲載しておく.

 

2.2.1 ハングル綴字法
1 総則

1項 ハングル綴字法は標準語を音の通り書くが,語法に合うようにすることを原則とする.

2項 文の各単語は分かち書きすることを原則とする.

3項 外来語は「外来語表記法」に従って書く.

 

2.2.2 標準語規定

1 標準語査定原則

第一章 総則

1項 標準語は教養ある人があまねく使用する現代ソウル語と定めることを原則とする.

2項 外来語は別途査定する.

2部 標準発音法

1章 総則

1項 標準発音法は標準語の実際の発音に従うが,国語の伝統性と合理性を考慮して定めることを原則とする.

 

2.2.3 外来語表記法

1章 表記の基本原則

1項 外来語は国語の現用24字母で表記する.

2項 外来語の1音韻は原則として1記号で表記する.

3 終声には, , , , , , のみを使用する.

4項 破裂音表記には濃音[19]を使わないことを原則とする.

5項 すでに固定している外来語は慣用を尊重するが,その範囲と用例は別途定める.

 


2.2.4 国語のローマ字表記法

1章 表記の基本原則

1項 国語のローマ字表記は国語の標準発音法に従って表記することを原則とする.

2項 ローマ字以外の符号はできるだけ使用しない.

 

3 実態調査

この章では定められた規範がどの程度社会的に受け入れられているのかについての実態を調査した結果を述べる.その際,「ローマ字表記法」については触れず,「ハングル綴字法」と「標準語規定」を中心に,「外来語表記法」の日本語表記法の部分に焦点を当てて見ていくことにする.

 

3.1 辞書に見る規範の用いられ方

現在の朝鮮語の言語規範が辞書においてどの程度反映されているのかを見てみることにする.辞書は韓国で出版されたものと日本で出版されたものから3つずつを見ることにする.

その際,基本的に巻頭のまえがきや凡例,辞書の使用法部分の記述を中心に見ることにした.

 

●朝鮮語大辞典 1981年 角川書店

・規範に対する記述は特になし.

・収録語彙は,現代語から李朝時代の語,標準語・方言に及ぶ.

・方言にはその標準語形を提示.

 

●朝鮮語辞典 1993年 小学館

・字母順および見出し語の綴り字は規範に基づく.

・標準語規定で捨てることになっている単語も収録.

죽살は捨てることになっているのに죽살이の省略と出ている막대막대기も同様)

 

コスモス朝和辞 1993年 白水社

88年の標準語形を収録.

・複数標準語としてあげられているが実際はそうではないものあり남비냄비

標準語形には「*」を表記.

単数標準語と複数標準語に関する区別も表示.

 

금성판 국어대사전(金星版 国語大辞典) 1991금성출판사

・規範性または生存性の如何によって標準語と非標準語を定める.

・発音は「標準語規定」第2部標準発音法に準拠.

・外来語は外来語表記法に準拠るが慣用を重視.

・巻末付録にハングル綴字法・標準語規定.

 

연세 국어대사전(延世 国語大辞典) 1998 두산동아

・表題語のハングル表記および綴字法は「ハングル綴字法」外来語表記は「外来語表記法」に従う.

・よく使われる非標準語は「標準語規定」と「標準語集2」に根拠して頻度数により選別,収録.

・純化対象[20]になっている漢字語は「国語純化資料」に根拠して表示.

・品詞体系と用語は原則的に綴字法統一案と学校文法体系に従う

・発音は原則的に「標準語規定」の「標準発音法」に従う.

 

표준 국어대사전(標準国語大辞典) 1999 国立国語研究所

・全て規範にしたがって表記.

・分かち書きの許容範囲まで提示している.

・非標準語は「간달지난달の間違い」のように表記.

・一般的に知られていても漢字語の純化語は提示しない.

・引用例も規範からずれている部分があれば修正する.

 

3.2 アンケート調査による韓国人の認識度調査

今回,韓国人の規範に対する認識度を調査を行った.調査は2001年11月に日本に留学中の韓国人23名に対して行った.アンケートの詳細などについては本稿末のアンケートを参照.質問項目はハングル綴字法と標準語規定に関するものが30問,外来語表記表による日本語表記について6問の計36問である.規範の中には長母音に対する項目なども含まれているが,今回は長母音は調査対象としなかった[21].アンケートに答えてくれた被調査者の年齢と出身地は以下の表1,2の通りである[22]

 

【表1】 アンケート被調査者の年齢

年齢

40代

30代

20代

10代

未回答

合計

人数

1名

8名

7名

1名

6名

23名

割合

4.3%

34.8%

30.4%

4.3%

26.1%

100%

 

【表2】 アンケート被調査者の出身地[23]

出身地

ソウル

京畿道

忠清南道

江原道

慶尚北道

慶尚南道

未回答

合計

人数

14名

1名

1名

1名

1名

1名

4名

23名

割合

60.9%

4.3%

4.3%

4.3%

4.3%

4.3%

17.4%

100%

 


3.2.1 ハングル綴字法と標準語規定について

ハングル綴字法と標準語規定に関する設問30問の内訳は語彙や語尾の選択に関するものが10問(設問番号1−10),表記に関するものが10問(設問番号11-20),分かち書きに関するものが10問(設問番号21-30)である[24].全30問の平均正答率は63.5%であった.以下,10問ずつ見ていくことにする.

 

3.2.1.1 語彙や語尾の選択について

まず,語彙や語尾の選択についての結果を見ていく.アンケートの結果を表にまとめたのが次の表1である.設問1から10まで全体の正答率は55.9%であった.

 

【表3】 語彙や語尾選択に関するアンケートの結果

設問N0.

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

平均

正解数(問)

4

3

17

22

4

1

16

20

19

22

12.8

有効回答数(問)

22

23

23

23

23

23

23

23

23

23

22.9

正答率(%)

18.2

13

73.9

95.7

18.2

4.3

69.9

87

82.6

95.7

55.9

 

語彙や語尾の選択に関するものの結果として特徴的なのが正答率が高いものと低いものの差が非常に大きく,中間的なものが少ないということである.正答率18.2%以下が4問,正答率69.9%以上が6問で,正答率が18.3%から69.8%になるものがなかった.規範が認識されているものと,そうでないものの差が激しいと言うことができるだろう.

正答率が低かったのはNo.1, 2, 5, 6番である.特にNo.6は正答率が4.3%で,正解したのが23人中1人という結果であった[25]

 

(6) 彼の事業が成就することを願っています

    a. 그의 사업이 성취하기를 바라요. (○)

                geue saeobi seongchwihagireul barayo.

b. 그의 사업이 성취하기를 바래요. (×)

             geue saeobi seongchwihagireul bareyo.

 

これは「바라다 barada」という動詞を活用させたときの形に関するものである.正答はaであるがbの形が話し言葉で非常によく用いられるためこの話し言葉形を規範となる形と誤識している人が多かった.No.4も話し言葉と規範の識別の問題であったが95.7%と高い正答率を見せて,No.6とは対照的な結果を見せている.No.10は「걷잡다 geotjapta」(手を打つ)겉잡다 geotjapta」(見積もる)という発音が同じで綴りと意味が異なるものであったが,95.5%と高い正答率を見せた.

No.5は擬態語についての設問であるが,擬態語についての規範の設定には疑問が残る.朝鮮語は非常に擬声擬態語が発達した言語で[26],子音や母音の交替によって同じ動作などの微妙なニュアンスをあらわすことができる.No.5を例に挙げると以下のようである[27]

 

깡충깡충[ʔkaŋtʃhʔkaŋtʃhuŋ] 足の短い動物や人が飛び跳ねる様子

껑충껑충[ʔkɔŋtʃhʔkɔŋtʃhuŋ] 長い足の動物や人が勢いよく飛び跳ねる様子

껑청껑청[ʔkɔŋtʃhɔŋʔkɔŋtʃhɔŋ] 長い足で楽しそうに軽々と跳ねる様子

 

擬声擬態語について規範を設けるというのは,朝鮮語の豊かな表現を無視しているともとれる.仮に擬声擬態語についても規範の設定が必要とされるのであれば,今以上に詳細な擬声擬態語についての調査が必要である.

No.8, 9の語尾の選択についてはどちらとも正答率が80%以上であり,規範としての定着率が高いものであると言える.No.7は品詞に関する問題であるが「알맞다 almatta」は形容詞であって「알맞는 almanneun」という形は存在しないにも関わらず30%の人がこの形を選んでいる[28].品詞に関する認識が薄くなっている語であると言えよう.

 

3.2.1.2 表記について

次に,表記についての設問の結果を見ていく.アンケートの結果を表にまとめたのが次の表2である.設問11から20まで全体の正答率は65.7%であった.語彙や語尾選択に関するところよりも正答率は10%以上高かった.

 

【表4】 表記に関するアンケートの結果

設問No.

11

12

13

14

15

16

17

18

19

20

平均

正解数(問)

12

21

16

14

23

8

7

17

14

19

15.1

有効回答数(問)

23

23

23

23

23

23

23

23

23

23

23

正答率(%)

52.2

91.3

69.6

60.9

100

34.8

30.4

73.9

60.9

82.6

65.7

表記に関するものの特徴としては,語彙や語尾の選択とは異なり正答率が20%を下回る非常に低いものがないと言うことが挙げられる.また,正答率が30-70%くらいが6問と最も多かったのも語彙や語尾の場合とは対照的な結果を見せている.

No.15, 16, 17についてであるがこれらは共通して「 s」の挿入に関連する設問であるが,面白い結果を見せている.

 

   (15) 年齢はアラビア数字で表記してください.

a. 연령은 아라비아 수자로 표기하십시오. (×)

   yeollyeongeun arabia sujaro pyogihasipsio.

b. 연령은 아라비아 숫자로 표기하십시오. (○)

   yeollyeongeun arabia sutjaro pyogihasipsio.

(16) 私は村の一番にある弟の家を見た.

a. 나는 마을의 맨 위쪽에 있는 동생의 집을 봤다. (○)

   naneun maeure maen wijjoge inneun dongsaenge jibeul bwatta.

b. 나는 마을의 맨 윗쪽에 있는 동생의 집을 봤다. (×)

   naneun maeure maen witjjoge inneun dongsaenge jibeul bwatta.

(17) それ古風表現

a. 그것은 예스러운 표현이다. (○)

   geugeoseun yeseureoun pyohyeonida.

b. 그것은 옛스러운 표현이다. (×)

   geugeoseun yetseureoun pyohyeonida.

 

No.15の正答率は100%であるのに,No.16, 17の正答率は30%程度である.No.15は基本的には「」が挿入されることのない漢字語[29]での例外である.No.16は「上の」という意味の接頭辞「 wi」「 wit」についてであるが,後ろに濃音化[30]できる子音が来ている場合は前者を用い,それ以外は後者を用いることになっているものである. No.17は接16と似たものであるが「예스럽다 yeseureopta」1単語であると認識されるため,接頭辞である「 yet」とは区別することになっている.このように同じ「 s」挿入の問題と言ってもその基準は様々であり,それが規範に対する認識を難しくしているものと思われる.

また,No.11, 12も語尾の表記に関する設問であるが,正答率に大きな差を見せていた.

 

   (11) 私が手伝ってあげますよ

a. 제가 도와 줄게요. (○)

   jega dowa julgeyo.

b. 제가 도와 줄께요. (×)

   jega dowa julkkeyo.

(12) 私が先に約束場所に行って見ましょうか

a. 제가 우선 약속 장소에 나가 볼가요? (×)

   jega useon yaksok jangsoe naga bolgayo?

b. 제가 우선 약속 장소에 나가 볼까요? (○)

                 jega useon yaksok jangsoe naga bolkkayo?

 

この場合は「줄게요 julgeyo」の「 ge」の部分も,「볼까요 bolkkayo」の「 kka」の部分も濃音で発音するにもかかわらず,「줄게요julgeyo」の「 ge」の部分は平音で表記することになっているのが正答率を下げている原因だと考えられる.また,現行の規範は施行される以前は「줄게요 julgeyo」の「 ge」の部分は濃音で「 kke」と表記していたのも規範に対する認識を難しくしている一因であろう.

No.20は漢字音の表記を問う設問であった.発音としては同じ「 ge」であっても表記が「 ge」と「 gye」の2種類が存在する.「 ge」と表記するものは「偈」「掲」「憩」の3つがあるのみである.

以上見たように,現行の規範では似通った環境であっても,場合によって異なる表記方法を採用しているためそれが韓国人の規範に対する認識の促進をさまたげているのが分かるであろう.

 

3.2.1.3 分かち書きについて

最後に分かち書きの問題についてである.朝鮮語はハングルが創成[31]されてから20世紀の初頭まで分かち書きは基本的に行われなかった.左下の図1はハングル創成直後の資料であるが,当時の朝鮮語は縦書きで分かち書きをしていなかった.

 

   

【図1】 15世紀の朝鮮語(月印釈譜,1459年)                     【図2】 現代の朝鮮語

 

このように朝鮮語は分かち書きをしなくても読むことは可能であるが,場合によっては意味の把握を妨げることもある.(a)の文は分かち書きをしていないものであるが,この文では2通りの分かち書きが考えられ,それぞれで意味がかなり違ってくる.

 

お父さんが部屋に入った.

           (a-2) 아버지 가방에 들어갔다.  abeoji gabange deureogatta.

                         お父さん鞄に入った.

 

このようなことは頻繁に起こることではないが,場合によっては非常に大きな問題にもなりうる.また,読書の効率という面からも分かち書きには大きな効果を期待できる.次は韓国の高校の文法の教科書の一部分であるが,同じ内容を(a)はハングルのみで分かち書きをしないもの,(b)は漢字語は全て漢字で表記し分かち書きをしないもの,(c)はハングルのみで分かち書きをしたものである.朝鮮語はわからなくても,(a)から(c)に移るにつれ読みやすくなるのがわかるだろう.

 

() 언어란사회집단의구성원들이그것에의해협동하고상호작용하는자의적인음성기호의체계이다.

() 言語란社會集團의構成員들이그것에依해協同하고相互作用하는恣意的인音聲記號의體系이다.

() 언어란 사회 집단의 구성원들이 그것에 의해 협동하고 상호 작용하는 자의적인 음성 기호의 체계이다.

 

分かち書きについてはいくつかの先行研究が存在する.趙文濟(1976)박홍길(1980)がそれである.これらも分かち書きについて高校生や大学生を対象について問題形式で調査を行ったものであるが,両者とも現行の規範が施行される以前のものであるため,本稿ではその内容にまでは深く立ち入らないことにする[32]設問21から30まで全体の正答率は69%であった.

 

【表5】 分かち書きに関するアンケートの結果

設問No.

21

22

23

24

25

26

27

28

29

30

平均

正解数(問)

23

14

16

8

13

18

18

13

18

16

15.7

有効回答数(問)

23

22

23

22

22

23

23

23

23

23

22.7

正答率(%)

100

63.6

69.6

36.3

59.1

78.3

78.3

56.5

78.3

69.6

69.2

 

分かち書きに関するものは全体的に正答率が高かく,正答率が50%台から70%台のものが8問であった.その中でも最も正答率が低かったのがNo.24の36.3%である.

 

(24) えていく

a. 불이 꺼져간다. (×)

   buri ggeojyeoganda.

b. 불이 꺼져 간다. (○)

   buri ggeojyeo ganda.

(25) 器を割ってしまった

a. 그릇을 깨뜨려버렸다. (×)

   geureuseul ggaetteuryeobeoryeotta.

b. 그릇을 깨뜨려 버렸다. (○)

   geureuseul ggaetteuryeo beoryeotta.

 

No.24とNo.25はどちらも補助用言の分かち書きの問題であるが,No.25の正答率は59.1%でNo.24の正答率より20%以上高い.これは「버리다 beorida」が補助用言であるということが「가다 gada」の場合よりはっきりと認識され,「가다 gada」が補助用言として用いられた時は1単語であるという認識が「버리다 beorida」の場合より強いためではないかと思われる[33].また,No.25の正答率は59.1%でNo.24の正答率より20%以上高いとは言っても,他の設問に比べると正答率は低く,補助用言に対しての分かち書きの認識は薄いことがうかがえる結果となった.

 

(21) 昨日本屋で小説を一冊買いました.

a. 어제 서점에서 소설책을 한권 샀습니다. (×)

   eoje seojeomeseo soseolchaegeul hangwon satseumnida.

b. 어제 서점에서 소설책을 한 권 샀습니다. (○)

   eoje seojeomeseo soseolchaegeul han gwon satseumnida.

(22) 一度こぼした水は再び戻すことはできない.

a. 한번 엎지른 물은 다시 주워 담지 못한다. (○)

   hanbeon eopjireun mureun dasi juwo damji motanda.

b. 한 번 엎지른 물은 다시 주워 담지 못한다. (×)

   han beon eopjireun mureun dasi juwo damji motanda.

 

No.21, 22に用いられている「 gwon」と「 beon」はどちらも単位をあらわすが,場合によって分かち書きがことなる.No.21のように数を数える時には分かち書きをするが,No.22のように「一度〜すると」「試しに一回〜してみる」のように用いられるときは全体が副詞としてとらえられて分かち書きをしない.この区別は難しいらしく,No.21の正答率は100%であったのに,No.22の正答率は63.6%No.21と比較すると40%近く低い結果があらわれている.

次は不完全名詞と語尾に関するものである.正答率はNo.2678.3%No.2778.3%No.2856.5%No.28の正答率だけが20%ほど低い結果となっている.

 

(26) 食べるだけ食べろ.

a. 먹을만큼 먹어라. (×)

   meogeulmankeum meogeora.

b. 먹을 만큼 먹어라. (○)

   meogeul mankeum meogeora.

(27) 私は先生ほど韓国語ができません.

a. 저는 선생님만큼 한국말을 잘 못합니다. (○)

   jeoneun seonsaengnimmankeum hangungmareul jal motamnida.

b. 저는 선생님 만큼 한국말을 잘 못합니다. (×)

   jeoneun seonsaengnim mankeum hangungmareul jal motamnida.

(28) 私が知っている事実はこれだけだ

a. 내가 아는 사실은 이것뿐이다. (○)

   naega aneun sasireun igeotppunida.

b. 내가 아는 사실은 이것 뿐이다. (×)

              naega aneun sasireun igeot ppunida.

同じ形態であってもそれが不完全名詞として用いられるか,語尾として用いられるかによって分かち書きの基準が異なる.不完全名詞の場合は分かち書きをし,語尾の場合は分かち書きはしないことになっている.No.28の正答率だけが低かったのは,同じく不完全名詞として用いられているNo.26の場合と異なり「」の後ろに指定詞-이다 -idaがあるために不完全名詞としての判別が難しくなったのではないかと考えられる.

このように見てみると形が同じであるにもかかわらず,用いられる意味や品詞の差異によって分かち書きが異なる部分に間違いが目立つことがわかる.特に不完全名詞の場合はその依存的な性格のために分かち書きに関する論争も多い部分であると言え,それだけ使用者にとっても分かち書きの判断の難しい部分なのであろう.

 

3.2.2 外来語表記法による日本語表記について

外来語表記法による日本語表記については,外来語表記法の2章表記一覧表の「表4日本語のかなとハングル対照表」,そして第3章表記細則の「第6節日本語の表記」で規定されている[34]

日本語表記については6問を,ハングル綴字法と標準語規定の場合とは異なり3択で出題した.その結果は以下の表6の通りである.

 

【表6】 日本語表記についてのアンケート結果

設問No.

1

2

3

4

5

6

平均

正解数(問)

18

9

22

6

3

15

12.2

有効回答数(問)

23

23

23

23

22

23

22.8

正答率(%)

78.3

39.1

95.7

26.1

13.6

65.2

53.5

 

表を見るとわかる通り問題によって正答率にかなりのばらつきが見られる.正答率が最も高かったNo.3は日本語の撥音「ッ」の表記に関するもので,間違えたのは1人しかいなかった.撥音については規範の内容が広く浸透していることがわかる.正答率が特に低いのはNo2, 4, 5の3つであった.No.2は長音表記の問題で,規範では長音は表記しないことになっているが,表記しようという回答が多かった.No.4は「ツ」の発音についてであるが,朝鮮語には日本語の「つ」に当たる音がないため「」と表記することになっているが,実際は「 ʔtʃɯ」や「tʃhɯ」と発音する人が多いため誤答が多かったものと思われる.No.5は最も正答率が低く13.6%しかなかった.語頭の清音をどう表記するかについての出題であったが,予想を覆して「 ʔtʃi」や「 tʃhi」と濃音や激音で表記した人が多かった.特に激音で表記したものを選んだ人が14名(60.9%)で最も多かった.平音「 tʃi」を濁音を表記する時のみ使用すると考えたための誤答ではないかと推測される.

全体を見ると正答率が53.3%で規範が浸透しているとは言いがたい状態にある.特に日本語の長音や撥音「ッ」の発音そして清濁[35]など,朝鮮語にないものの表記で間違いが目立っていた.

 

おわりに

以上,現代朝鮮語の言語規範の歴史と現在をみてきた.最初の規範ができてから70年近く経つことになるが,その実態を見てみると韓国人全体にその規範が認識されているとはまだまだ言いがたい状況にあるといえる.これからは,人々の認識や語彙などの使用の実態調査を通して,規範の修正検討が必要ではないかと思われる.しかし,改変を加えつつとはいいながら言語の規範が存在したということが,辞書の編纂をはじめとする多くの分野で果たした役割は決して小さくはないだろう.

 

参考文献

●日本語で書かれた文献

大阪外国語大学朝鮮語研究室編(1981)『朝鮮語大辞典』角川書店

亀井孝・河野六郎・千野栄一編(1996) 『言語学大辞典』 三省堂

菅野裕臣(1981) 『朝鮮語の入門』 白水社

菅野裕臣(1985) 「朝鮮語の外来語表記法」 『基礎ハングル』 6号. 三修社

菅野裕臣(1986a) 「朝鮮語の方言,標準語,ソウルことば」 『基礎ハングル』 9号. 三修社

菅野裕臣(1986b) 「朝鮮語の正書法」 『基礎ハングル』 11号. 三修社

菅野裕臣・早川嘉春・志部昭平・浜田耕策・松原孝俊・野間秀樹・塩田今日子・伊藤英人共編,金周源・徐尚揆・浜之上幸協力(1988)『コスモス朝和辞典』 白水社

小学館・金星出版社共同編集(油谷幸利・門脇誠一・松尾勇・高島淑郎編)(1993)『朝鮮語辞典』 小学館

野間秀樹(1990) 「朝鮮語のオノマトペ―擬声擬態語の境界画定,音と形式,音と意味について」 『学習院大学言語共同研究所紀要』 14

野間秀樹(2000) 『至福の朝鮮語』 朝日出版社

三ッ井崇(2000) 「朝鮮総督府「諺文綴字法」の歴史的意味―審議過程の分析を通して―」 『一橋研究』 第25巻 第1

安田敏朗(1999) 『「言語」の構築 小倉進平と植民地朝鮮』 三元社

 

●朝鮮語で書かれた文献

菅野裕臣(1993) 한글과 정서법『國語學』 23 國語學會

교육부(1996) 『고등 학교 문법』 대한 교과서 주식회사

국립국어연구원(1995) 『한국 어문 규정집』 국립국어연구원

국립국어연구원(1999) 『표준 국어대사전』 국립국어연구원

국어연구소(1988) 『한글 맞춤법 해설』 국어 연구소

김민수·고영근·이승재·임홍빈 편집(1991) 금성판 국어대사전금성출판사

野間秀樹(1997) 「현대 한국어의 대우법 체계」 『말』 제21집 연세대학교 연세어학원 한국어학당

문화체육부(1996) 『국어순화용어자료집』 문화체육부

박홍길(1980) 국어교과서에 나타난 띄어쓰기 현실―한글맞춤법 개정시안에 따른 시험적 연구」 『한글』 제168호 한글학회

申昌淳(1992) 『國語正書法硏究』 集文堂

安秉禧(1988) 한글 맞춤법의 歷史 『국어생활』 제13호 국어연구소

연세대학교 언어정보개발연구소 편(1998) 『연세 한국어사전』 두산동아

李基文外(1983) 『韓國 語文의 諸問題』 一志社

李翊燮(1988) 국어 표준어의 형성과 변천 『국어생활』 제13호 국어연구소

李熙昇·安秉禧(1989) 『한글 맞춤법 강의』 新丘文化社

趙文濟(1976) 띄어쓰기의 實態에 따른 指導方案의 硏究 『국어교육』 27,28合倂號

 

●ウェブサイト

大韓民国学術院  http://nas.go.kr/

大韓民国国立国語研究院  http://www.korean.go.kr/http://www.sejong.or.kr/

東京外国語大学朝鮮語学研究室(野間研究室) http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/nomahideki/index.shtml

ハングル学会  http://www.hangeul.or.kr/

 


<資料1> ハングル綴字法한글 맞춤법目次

1章 総則

2章 字母

3章 音に関すること

1節 濃音

2節 口蓋音化

3節 ‘’音の終声

4節 母音

5節 頭音法則

6節 重なって出る音

4形態に関すること

1節 体言と助詞

2節 語幹と語尾

3節 接尾辞がついてできた語

4節 合成語および接頭辞がついた語

5節 略語

5分かち書き

1節 助詞

2節 依存名詞,単位をあらわす名詞および列挙する語など

3節 補助用言

4節 固有名詞および専門用語

6その他のこと

  録 文章符号

 

 

<資料2標準語規定표준어 규정の目次

1部 標準語査定原則

1章 総則

2章 発音変化による標準語規定

1節 子音

2節 母音

3節 略語

4節 単数標準語

5節 複数標準語

3章 語彙選択の変化による標準語規定

1節 古語

2節 漢字語

3節 方言

4節 単数標準語

5節 複数標準語

2部 標準発音法

1総則

2章 子音と母音

3章 音の長さ

4章 終声の発音

5音の同化

6濃音化

7章 音の添加

 

 

<資料3外来語表記法외래어 표기법目次

1章 表記の基本原則

2章 表記一覧表

           1 国際音声記号とハングル対照表

           2 スペイン語字の字母とハングル対照表

           3 イタリア語字の字母とハングル対照表

           4 日本語のかなとハングル対照表

5 中国語の注音符号とハングル対照表

           6 ポーランド語の字母とハングル対照表

7 チェコ語の字母とハングル対照表

           8 セルボクロアチア語の字母とハングル対照表

9 ルーマニア語の字母とハングル対照表

           10 ハンガリー語の字母とハングル対照表

11 スウェーデン語の字母とハングル対照表

           12 ノルウェー語の字母とハングル対照表

13 デンマーク語の字母とハングル対照表

3章 表記細則

1英語の表記

2節 ドイツ語の表記

3節 フランス語の表記

4節 スペイン語の表記

5節 イタリア語の表記

6節 日本語の表記

7中国語の表記

8節 ポーランド語の表記

9節 チェコ語の表記

10節 セルボクロアチア語の表記

11節 ルーマニア語の表記

12節 ハンガリー語の表記

13スウェーデン語の表記

14節 ノルウェー語の表記

15節 デンマーク語の表記

4章 人名,地名表記の原則

1節 表記原則

2節 東洋の人名,地名表記

3節 海,島,川,山などの表記細則

<資料4国語ローマ字表記法국어의 로마자 표기법目次

1章 表記の基本原則

2章 表記一覧

3章 表記上の留意点


<資料5 日本語のかなとハングル対照表と表記細則

 

   

     

   

   

(ヰ)

(ヱ)

()

()

()

()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャ

 

キュ

 

キョ

 

 

 

 

ギャ

 

ギュ

 

ギョ

 

 

 

 

シャ

 

シュ

 

ショ

 

 

 

 

ジャ

 

ジュ

 

ジョ

 

 

 

 

チャ

 

チュ

 

チョ

 

 

 

 

ヒャ

 

ヒュ

 

ヒョ

 

 

 

 

ビャ

 

ビュ

 

ビョ

 

 

 

 

ピャ

 

ピュ

 

ピョ

 

 

 

 

ミャ

 

ミュ

 

ミョ

 

 

 

 

リャ

 

リュ

 

リョ

 

 

 

 

 

表記細則

6 日本語の表記

1項 促音[]は‘’に統一して書く.

2項 長母音は別途表記しない.

 


언어규범에 대한 앙케이트 조사

 

● 다음 중에서 밑줄 부분의 어휘, 표기, 띄어쓰기, 발음 등이 한글 맞춤법(또는 표준어 규정) 맞는다고 생각하는 것을 고르십시오.

 

(1) a. 어른 앞에서는 담배를 삼가세요.

b. 어른 앞에서는 담배를 삼가하세요.

 

(2) a. 몸을 허우적거리면서 수영했다.

b. 몸을 허위적거리면서 수영했다.

 

(3) a. 남비 불에 올려 놓았다.    

b. 냄비 불에 올려 놓았다.

 

(4) a. 지난 주말에 삼촌 집에 놀러 갔다.

b. 지난 주말에 삼춘 집에 놀러 갔다.

 

(5) a. 아이들이 깡총깡총 뛰면서 놀다.

b. 아이들이 깡충깡충 뛰면서 놀다.

 

(6) a. 그의 사업이 성취하기를 바라요.

b. 그의 사업이 성취하기를 바래요.

 

(7) a. 알맞는 답을 고르십시오.

b. 알맞은 답을 고르십시오.

 

(8) a. 동경외국어대학교에 가려면 어떻게 가요?

b. 동경외국어대학교에 갈려면 어떻게 가요?

 

(9) a. 비가 오던지 말던지 제시간에는 떠나겠습니다.

b. 비가 오든지 말든지 제시간에는 떠나겠습니다.

 

(10) a. 이미 걷잡을 없는 상태이다.

b. 이미 겉잡을 없는 상태이다.

 

(11) a. 제가 도와 줄게요.

b. 제가 도와 줄께요.

 

(12) a. 제가 우선 약속 장소에 나가 볼가요?

b. 제가 우선 약속 장소에 나가 볼까요?

 

(13) a. 책은 누구 거에요?

b. 책은 누구 거예요?

(14) a. 이것은 책이오, 저것은 붓이다.

b. 이것은 책이요, 저것은 붓이다.

 

(15) a. 연령은 아라비아 수자 표기하십시오.

b. 연령은 아라비아 숫자 표기하십시오.

 

(16) a. 나는 마을의 위쪽 있는 동생의 집을 봤다.

b. 나는 마을의 윗쪽 있는 동생의 집을 봤다.

 

(17) a. 그것은 예스러운 표현이다.

b. 그것은 옛스러운 표현이다.

 

(18) a. 이따가 오겠어요.

b. 있다가 오겠어요.

 

(19) a. 지나간 일은 깨끗이 잊기로 했다.

b. 지나간 일은 깨끗히 잊기로 했다.

 

(20) a. 휴게 시간에 담배를 피우러 방을 나왔다.

b. 휴계 시간에 담배를 피우러 방을 나왔다.

 

(21) a. 어제 서점에서 소설책을 한권 샀습니다.

b. 어제 서점에서 소설책을 샀습니다.

 

(22) a. 한번 엎지른 물은 다시 주워 담지 못한다.

b. 엎지른 물은 다시 주워 담지 못한다.

 

(23) a. 주시경선생님 이렇게 말씀하셨습니다.

b. 주시경 선생님 이렇게 말씀하셨습니다.

 

(24) a. 불이 꺼져간다.

b. 불이 꺼져 간다.

 

(25) a. 그릇을 깨뜨려버렸다.

b. 그릇을 깨뜨려 버렸다.

 

(26) a. 먹을만큼 먹어라.

b. 먹을 만큼 먹어라.

 

(27) a. 저는 선생님만큼 한국말을 못합니다.

b. 저는 선생님 만큼 한국말을 못합니다.

 

 

(28) a. 내가 아는 사실은 이것뿐이다.

b. 내가 아는 사실은 이것 뿐이다.

 

(29) a. 쓸데없는 참견하지 .

b. 쓸데 없는 참견하지 .

 

(30) a. 교실에는 책상 의자등이 있다.

b. 교실에는 책상 의자 등이 있다

 

● 일본의 지명을 한글로 표기한 중에서 외래어 표기법에 맞는다고 생각하는 것을 고르십시오.

 


(1) 新橋(しんばし)

a. 신바시

b. 심바시

c. 싱바시

 

(2) 王子(おうじ

a. 오지

b. 오오지

c. 오우지

 

(3) 札幌(さっぽろ)

a. 삳포로

b. 삿포로

c. 삽포로

 

(4) 四谷(よつや

a. 요쓰야

b. 요쯔야

c. 요츠야

 

(5) 千葉(ちば

a. 지바

b. 찌바

c. 치바

 

(6) 三田(みた

a. 미다

b. 미따

c. 미타

 


 

앙케이트는 이상입니다. 협력해 주셔서 대단히 감사합니다. 이것은 한국어의 맞춤법에 관한 실정을 조사하는 것입니다. 학술적인 목적 이외에는 절대로 사용하지 않습니다. 이 조사의 결과는 11 24일에 외국어교육학회에서 발표할 예정입니다.

마지막으로 지장이 없는 범위에서 이하의 정보를 기입하시기 바랍니다.

 

생일 :        년생                      성별 :     

 

출신지 :

 

맞춤법에 대한 학교 교육을 받은 일이 있습니까?

 

없음       있음 ( 초 · 중 · 고 · 대 · 기타)

 



[1] 朝鮮語は韓国と北朝鮮からなる朝鮮半島を主として,その他中華人民共和国東北地方の延辺朝鮮族自治州や旧ソビエト連邦領内(ウズベキスタン,カザフスタン,トゥルクメニスタン,ハバロフスク地方,サハリン州など)の朝鮮族,日本の在日韓国・朝鮮人やアメリカ合衆国の在米韓国人の間で用いられている.話者の総人口は6000から7000万程度.

[2] 北朝鮮でも独自の言語規範を採用しているが,その基礎となった「ハングル綴字法統一案(한글 마춤법 통일안1933年,ハングル学会)」は韓国の現行の言語規範の基礎となったものと同じであるために類似点は多い.

[3] 「ハングル学会」の前身として「朝鮮語研究会」と「朝鮮語学会」が存在するが,本稿では便宜上3者共に「ハングル学会」に統一して表記することにする.なお,朝鮮語研究会は1921年に設立,1931年に朝鮮語学会と名称を変更した後,1949年に現在のハングル学会として発足した.

[4] なお実際には,朝鮮語の正書法は朝鮮総督府の作った1912年の「普通学校用諺文綴字法」が最初であると言えるがここでは扱わない.これは1920年に完成した総督府編『朝鮮語辞典』を経て1921年に修正され(「普通学校用諺文綴字法大要」),その後1930年にも第3次の制定(「諺文綴字法」)が行われている.これらは,基本的には従来のつづりをできるだけ生かし,現代語の発音に合わせてつづりを整理したものであった.その表記法や審議過程など詳細については菅野裕臣(1986b),三ッ井崇(2000)参照.

[5] 1940年の改定では,本文第19項などや「마춤법」の表記を「맞춤법」に変えるなど数箇所の文句の修正と,付録「文章符号」の増補修正が行われた.1946年の改定では数項の修正(10項,30項,43項,61項)と変更(65項を62項に),そして削除(62項,63項,64項)と追加(63項)が行われた.

[6] ハングル綴字法改定案(한글 맞춤법 개정안)」として1984年に文教部に提出.

[7] 「ハングル綴字法案(한글 맞춤법안)」として1987年に文教部に提出.

[8] 한글 맞춤법일안比較については이희승안병희(1989)を参照.

[9] 言語の変化に合わせた内容の修正を始めとして,全体の構成の大幅な変更や,解説文の整理などが行われた.

[10] 原文は以下の通り.표준말은 大體로 現在 中流 社會에서 쓰는 서울말로 한다.

[11] 標準語に関しても朝鮮総督府の「普通学校用諺文綴字法」(1912年)で「京城語を標準とする」と定められたが,民間ではそれぞれの方言で書かれるという状態であったようである.菅野裕臣(1986a)参照.

[12] ハングル学会が設置.査定委員73名のうち,京畿道出身者37名(そのうちソウル出身者26名),残りの36名は道の人口に比例して選出された.菅野裕臣(1986a),安田敏朗(1999:267)参照.

[13] 刊行は1947年から1957年にかけて行われ,全6巻が刊行された.

[14] 原文以下り.로마 자 이외의 부호는 되도록 사용하지 않는다.

[15] 例えば濃音のの表記が「kk」から「k’」に変わるなど.

[16] 1984年の表記法では母音の前でも語頭と語中では表記を分けていたのに対し,2000年の表記法では統一した.例えば「고기」の表記が「kogi」から「gogi」に変わった.

[17] 1984年の表記法では「」の前では「sh」その他の母音の前では「s」で表記していた.2000年の表記法では区別せず両者共に「s」で表記する.

[18] 母音を例に挙げると,1959年と2000年の表記で異なるのは」の表記を「weo」から「wo」に,「」の表記を「eui」から「ui」に変えたのみで,その他の母音の表記は全て同じ.

[19] 30参照.

[20] 日本語をそのまま借用して使用している語彙のうち,それを純朝鮮語に置き換えて使用しようという対象になっているもの.

[21] 長母音に対する認識調査は野間秀樹1997)参照.この論文の結果では「母音の長短に対する認識はほぼ完全に消失した」と報告されている.この結果からすると規範の中に長音に関する項目を入れること自体についても問題になる可能性がある.さらに大規模な調査検討が必要とされるであろう.

[22] 1以下割合を示すときは小数点2位を四捨五入した値を示す.そのため,合計が100%にならない場合もある.

[23] 韓国の行政区画について本稿末の資料参照.

[24] 表記と語彙選択については重複する部分があり,厳密に分けることができないものもある.しかし,本稿では便宜的に以上の3つに分けて考えた.

[25] 以下例文を表示する際,例文の番号はアンケートと同一にする.また,規範に照らして正しいものには「○」,間違っているものには「×」を例文の後ろに表示した.また,例文などのローマ字表記2000年の「国語のローマ字表記法」に従った.

[26] 朝鮮語の擬声擬態語がどれくらいあるかというのは確定することはできないが,野間秀樹(1990)では「2000から8000,おおむね4000といった概数になってしまうが,かなりの数になることだけは間違いない」と述べられている.

[27] そのにも깡짱깡짱[ʔkaŋtʃhʔkaŋtʃhaŋ]깡쫑깡쫑[ʔkaŋtʃhʔkaŋtʃhoŋ]껑쩡껑쩡[ʔkɔŋʔtʃɔŋʔkɔŋʔtʃɔŋ]껑쭝껑쭝

[ʔkɔŋʔtʃuŋʔkɔŋʔtʃuŋ]といったバリアントが存在する.このような母音と子音の交替と意味との関わりについては野間秀樹(1990)参照.

[28] 連体形語尾「-」は動詞と存在詞のみについて,形容詞や指定詞につくことはない.

[29] 朝鮮語の語彙は「固有語」「漢字語」「外来語」3つに分けられる.固有語は純粋な朝鮮語でハングルでのみ表記が可能.漢字語は漢字の音をハングルで表記したものであり,漢字で表記することもできる.外来語は(漢字語以外の)外来語をハングルで表記したものを言う.

[30] 朝鮮語の子音のうち破裂音,破擦音には平音,激音,濃音の3項対立が存在する.また,摩擦音にも非濃音と濃音の対立が存在する.発音の上でこれら3項の区別が存在するのは音節の頭の初声の位置においてのみ.平音は語頭では弱い無声有気音,語中(有声音間)では有声音,激音は語頭/語中を問わず強い無声有気音である.濃音は語頭/語中を問わずほとんど完全な無声無気音であり.平音はある一定の音韻的環境において濃音化する.

[31] ハングル1443年に創成され,1446年に「訓民正音」の名で公布された.

[32] 趙文濟(1976)は大学生を対象に120問を出題,박홍길(1980)は高校生を対象に454問を出題.どちらも正答率は大体50%くらいとの結果が出ている.詳細はそれぞれの論文を参照のこと.

[33] なおこれらは原則として分かち書きをすることになっているが,つけて書くものも規範の中で許容されている.

[34] その詳しい内容については本稿末の資料5を参照のこと.

[35] 朝鮮語の平音(,,,)は語頭では無声,語中語尾では有声で発音されるが弁別的機能は存在しない.